一時期タイ映画が一気に注目を集めたことは記憶に新しいですが、実は今「ベトナム映画」にも熱い視線が注がれているのはご存知ですか?
ベトナム映画といえば史実的にも戦争の影が色濃く残るものが多いと思われがちですが、実はとっても詩情的で美しい映画がたくさんあるのです。
ベトナム映画独特の質感や匂い立つような色彩に、きっとあなたも引き込まれるはず…!
今回は、そんな数ある魅力的なベトナム映画の中から、選りすぐりの映画を厳選してご紹介します。
Mắt biếc(邦題『つぶらな瞳』)
出典:https://atims.info/matbiec/
ベトナムの人気作家「グエン・ニャット・アイン」による長編小説が原作となっており、ベトナム本国で公開から約一か月で興行収入8億2300万円を記録した大ヒット映画です。
舞台は1960~1970年代のクアンナム省のドードー村。
小さい頃からいつも一緒の幼馴染のガンとハー・ランは、中学校進学を機に故郷を離れ、都市部へと通うことになります。
あんなに毎日のように会っていた二人ですが、以来一緒に過ごせるのは故郷へと帰る週末のみに…。
次第に都会の色に染まっていき、故郷を忘れていくハー・ラン。そんな中でもハー・ランに想いを寄せ続けるガンは…。
日本人の心にも必ず響くものがあるこのどうしようもない切なさに、きっとあなたも胸が締め付けられるはず。
作品データ
【公開】2019年
【制作国】ベトナム
【監督】ヴィクター・ヴー
【受賞歴等】なし
Mùi Ðu Ðủ Xanh(邦題『青いパパイヤの香り』)
カンヌ国際映画祭で新人監督賞を受賞したベトナム出身のフランス映画監督トラン・アン・ユンのデビュー作。同氏が監督・脚本を手がけたフランス・ベトナムの共同制作映画です。
舞台は1951年のサイゴン(現在のホーチミン市)。
資産家のもとへ奉公人として雇われた10歳になる少女ムイは、懸命に働きながら家族との交流を深めていきます。
ある日長男チュンが連れてきた友人クェイに一目ぼれしてしまうムイ。淡い恋心を抱きながらも、父親の過去の失踪が家に暗い影を落としていき…。
10年後、ムイとクェイの関係に変化が…。
パパイヤ料理と共に描かれるあたたかいヒューマンストーリーの中の切ない恋心。
観たあとはきっと誰もがやさしい気持ちに包まれるはず。
作中を通してセリフは抑えられ静かに進む中、虫の音や雨音、ピアノの音がBGMとしてやさしく寄り添う世界観も魅力の作品です。
作品データ
【公開】1993年
【制作国】フランス
【監督】トラン・アン・ユン
【受賞歴等】セザール賞新人監督賞、新人賞
Mùa Hè Chiều Thẳng Ðứng(邦題『夏至』)
前述の「青いパパイヤの香り」のトラン・アン・ユン監督作品。
舞台はハノイ市と世界遺産のハロン湾。
母親の命日に集まった三人の姉妹とその姉妹二人の夫と男兄弟一人が、それぞれさまざまな人間関係の中で渦巻く嘘や秘密をしっとりと描いています。
作中から香る「ベトナム」特有の色や匂いや音や空気…。
五感をフルに使ってベトナムの色彩や湿度を体感することができるのもトラン・アン・ユン監督作品の大きな魅力の一つです。
作品データ
【公開】2000年
【制作国】ベトナム、フランス、ドイツ
【監督】トラン・アン・ユン
【受賞歴等】第8回クロトゥルーディス賞:最優秀撮影賞ノミネート (2002)
Tôi Thấy Hoa Vàng Trên Cỏ Xanh(邦題『草原に黄色い花を見つける』)
ベトナムの大人気作家グエン・ニャット・アインのベストセラー長編小説が原作となった映画。のちに前述の大ヒット作「つぶらな瞳」に続く名作の一つです。
1980年代の片田舎の村を舞台に、ティエウとトゥエンという二人の兄弟の成長を通して描かれるそれぞれが抱える葛藤や迷い。
彼らが大人になるまでのその狭間でうずまく思春期の微妙な心の揺らぎや淡い恋心を、美しい映像とともに詩情的に表現した話題作です。
また、今作で特筆すべきは映像だけではなくその音楽もしかり。
静かにすすむ映像に寄り添う美しい音楽が、作品により味わいを持たせてくれます。
切なくも儚い時期を丁寧に描写したこの映画は、誰の心の中にもあった懐かしい心の揺らぎを思い出させてくれるはず。
作品データ
【公開】2015年
【制作国】ベトナム
【監督】ヴィクター・ヴー
【受賞歴等】第2回シルクロード国際映画祭:最優秀作品賞 (2015)
Bẫy Rồng(邦題『クラッシュ』)
ベトナム映画におけるこの手のクライムアクションムービーは、アクション好きの人でも意外とノーマークな方も多いのではないでしょうか?
誘拐によって海外に売り飛ばされそうになったフェニックスは、裏組織のボス・ブラックドラゴンに救われます。
その組織の中で殺し屋として訓練を受け成長した彼女は、「7つのミッションを成功させれば、母娘ともに解放する」というブラックドラゴンの約束を信じて突き進みます。
最後のミッションとなるのが、国家防衛のために打ち上げられた情報衛星をコントロールするコードが仕組まれているというPCを見つけ出すこと。
フェニックスは、タイガー・スネイク・オックス・ホークという互いに素性も知らない暗殺者同士4人と手を組み、同じくそのPCを狙う巨大闇グループと激しい攻防を繰り広げていくことに…。
今作の魅力は、なんといっても「CGなし・スタントなし」の超本格アクションです。
美男美女である主演「ジョニー・チー・グエン」と「ゴー・タイン・バン」二人の画力をもって繰り広げられる、生身のアクションは最高にクール!
5人の心理戦も絡み、最後までハラハラドキドキ目が離せません。
作品データ
【公開】2009年
【制作国】ベトナム
【監督】レ・タイン・ソン
【受賞歴等】なし
Song Lang(邦題『ソン・ランの響き』)
もともとベトナム南部の歌劇の「カイルオン」をテーマにした作品で、レオン・レ監督によると今作は「ゲイ映画のレッテル貼りを打破する」挑戦だったのだそうです。
舞台は1980年代のホーチミン市。
大衆歌舞劇カイルオンの劇団員であった両親のもと、とあるトラウマからその道へは進まず借金の取り立てで生活していたユン。
ある日、カイルオンの劇場に借金の取り立てに訪れたユンは、人気劇団員のリン・フンと運命的な出会いを果たします。きらびやかな世界で活躍するリン・フンと、一方で闇の世界に生きるユン。
そんな正反対な二人が、停電の日の夜を堺にそれぞれに悩みや迷いを抱えながらも次第に心を通わせていく様を繊細に描いています。
決して交わるはずのなかった二人の男たちが、互いの孤独を埋めていく切ない3日間は、「ゲイ映画」にありきたりな世界観に一石を投じています。
作品データ
【公開】2018年
【制作国】ベトナム
【監督】レオン・レ
【受賞歴等】第31回東京国際映画祭:東京ジェムストーン賞/オーストラリア映画監督協会賞/北京国際映画祭:最優秀新人監督賞/ASEAN国際映画祭:脚本賞/サンディエゴ・アジアン映画祭:観客賞/ロサンゼルス・アジアンパシフィック映画祭:審査員特別賞、ほか多数
まとめ
日本では意外と知られていないベトナム映画ですが、実は世界的に見ると評価の高い素晴らしい映画がたくさんあることがおわかりいただけたのではないでしょうか?
どこか懐かしい切なさを感じるのは、ベトナムの人々の交流や風景の中に、日本人の心にも通じる部分を見つけることができるからなのかもしれません。
ぜひ、あなたのお気に入りのベトナム映画を探してみてくださいね。
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